「公共ビジネスの着眼点」 随意契約制度の功罪について考える

防衛省の調達に議論がおきています。

『防衛省を直撃!大規模ワクチン接種センター運営を不可解な随意契約30億円で民間に丸投げ』

 5月24日から防衛省が稼働させる予定になっている東京と大阪の大規模接種センターの運営業務が、東京センターについては約19億5000万円で日本旅行、大阪センターについては9億7000万円で東武トップツアーズに委託されたというものです。

 ここで出てくるキーワードが“随意契約”です。本来、行政機関の調達では、価格ないしは企画・技術のいずれか、もしくは両方での競争性が求められます。しかし、例外的に競争の無い調達が認められており、それが随意契約と呼ばれるものになります。指名発注と言ってもいいでしょう。 

 誤解をおそれずに言うと、随意契約は政策手段の一つとして有効なものです。公共調達では極端な価格競争を仕掛ける業者により、低品質の公共サービスが流通してしまうということが、往々にして生じてしまいます。しかし、随意契約という制度をうまく利用すれば、適正な品質を適正な価格で調達できるのです。

もちろん、随意契約を行うためには合理的な理由が必要になります。
随意契約が適用されるためには、
①少額の調達
②技術的に他にやれるところが無い
③緊急性が求められる
といった理由が必要になります。

 今回の防衛省のケースは②と③の組み合わせだと思われますが、かなり高額になる事業であり、それを随意契約にしてしまったのが適切かどうかは確かに議論の余地はありそうです。

 いずれにしても公共ビジネスに携わる事業者の立場から考えても、随意契約という調達手段の特性を理解し、それを戦略的に生かすことは重要です。
 例えば、民間での有効性は検証されているが、官公庁での実績が無いサービスがあるとしましょう。こういった場合、そのサービスに相性のいい自治体を探し、営業をかけて少額随契を結ぶように働きかけるのです。そしてその実績をテコにして、全国の自治体に横展開を図ることもできるわけです。

 官公庁領域で事業拡大できるポテンシャルを持つ企業はたくさんあります。当社ではそんな企業のお手伝いができれば幸いです。