「公共ビジネスの着眼点」 自民党総裁選で政策はどう変わるのか

 自民党総裁である菅義偉首相が、総裁選に立候補しない意向を表明した。事実上の首相辞意、退陣表明となります。
 コロナ対策で思うような結果が出ず、支持率が下がる一方の中での決断となりましたが、誰が首相であったとしても難しいかじ取りだったかと思います。引き続き任期まで職務を全うして頂きたいと思います。

 この辞任を受けて、自民党の総裁選が行われることになります。
 興味深いのが、菅首相退陣の一報を受けて日経平均が急騰したことです。これは菅首相への市場の評価が低かったというよりは、自民党の総裁選へ向けて、候補者が政策アピールを展開することへの期待でしょう。

 現時点で有力な候補者は岸田文雄氏、河野太郎氏、高市早苗氏の3人に絞られていますが、それぞれの政策を簡単に見てみましょう。

 岸田氏は「小泉改革以降の新自由主義政策を転換する」として、主に経済政策の分野で大きな方針転換を謳っています。簡潔に言うならば、成長した分の経済的利益の分配を適切に行うことで格差の拡大にストップをかける、ということ。
「令和版所得倍増のための分配政策」として、
・下請けいじめゼロ
・子育て世代の住居費、教育費の支援
・医療、介護、保育などの現場で働く人の所得を増やすための「公定価格」の抜本的見直し
・財政単年度主義の弊害是正
等を掲げています。

 河野氏は内閣の一員となるまでは、自民党の中では少数派である「脱原発」を掲げる主力議員として活動していました。閣僚になって以降は脱原発の主張は聞かれなくなりましたが、総裁選に出馬するとなると、否応なくエネルギー政策に注目が集まります。
 その中身は「産業界も安心できる現実的なエネルギー政策を進める」というもの。安全性を確認した原子力発電所をある程度、再稼働することが念頭にあるとみられます。やはり脱原発の争点化を避けることが、総裁選の勝利に近づくという判断でしょう。

 高市氏は総裁選出馬の会見で「サイバースペースにおける安全保障が経済安全保障と国防力の強化に繋がる」として、「サイバーセキュリティ対策の強化」を最も強調していました。また経済政策の分野では、アベノミクスを継承する形で「サナエノミクス」を提唱。アベノミクスで言う第3の矢に当たる「大胆な成長戦略および危機管理に基づく投資」などを進めていく方針です。また、総務相時代に「放送法違反による電波停止命令を是認する」という発言で物議をかもしたことも記憶に新しく、一つの目玉として「NHK改革」を掲げています。

 また、このような自民党中心の動きに、野党も埋もれるわけにはいきません。
 立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の野党4党は、市民連合主導の形で共通政策に合意。共通政策には「科学的知識に基づくコロナ対策の強化」「消費税減税、原発のない脱炭素社会の追求」「コロナ禍に乗じた憲法改悪への反対」などが盛り込まれています。

 秋の衆議院議員選挙で、実質的に自公政権に対抗する選択肢となり得るのは立憲民主党になるかと思いますが、公約第一弾として「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」を発表。国会にかけず、立法せずとも閣議決定で進められる7つの項目として「新型コロナ対策の緊急補正予算編成」「新型コロナ対策司令塔の設置」「日本学術会議人事で任命拒否された6人の任命」などを挙げています。

 実際に自民党総裁が決定するのは9月29日(水)です。このコロナ過にありながら、しばらくは政局的な混乱が続きそうですが、公共ビジネスに携わっている身としては、注意深く動向を見守っていく必要があるでしょう。