「公共ビジネスの着眼点」 キャラクターを活用した法制度の周知

 法務省が土地の名義登記を推進するためのイメージキャラクター「トウキツネ」を公開しました。

「相続時に登記を」 新キャラ“トウキツネ”でPR 法務省
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4364830.html

 一般財団法人「国土計画協会」の所有者不明土地問題研究会による試算結果では、このままだと日本全国の所有者不明土地は、北海道本島の土地面積(約780万ヘクタール)に近い720万ヘクタールに匹敵するそうです。
 所有者不明土地とは、所有者が分かっても転居などによって連絡先が分からなかったり、土地の名義人が亡くなった後に投棄されないままで相続人が増えてしまい、すべての人への連絡が困難になったりしたもの。この場合土地の売却や利活用の際の手続きに莫大なコストがかかり、売買や利用自体を諦めざるを得なくなることも珍しくありません。

 今回の法務省によるキャンペーンの背景には、土地の所有者などの権利関係を明確にするための「登記」がされないまま、所有者が不明になっている土地が増え、それが公共事業や土地開発の妨げになるなどの社会問題化していることが挙げられます。
 これらの社会問題の解決に向けて、法改正が為されました。亡くなった親の土地を子供など相続人が相続した際に、名義人を変更する手続きを「相続登記」と言います。2021年春の国会で、その「相続登記」が義務化されました。この改正法が施行されると、相続登記と所有権の登記名義人の変更について、正当な理由がなく申請しなかった場合には、それぞれ10万円の過料を支払わないといけなくなります。そのため、この法改正について広く周知する必要があるのです。

 このような法制度改正を周知する際に、キャラクターを使ってPRする方法は、官公庁では定石の一つです。
 特定のタレントを使うことで色がつき過ぎたり、スキャンダルなどが発生することを懸念するからです。また、官公庁では基本的に予算の執行が年度単位で行われるので、複数年度に渡ってキャンペーンを展開したい場合に、タレントとの契約やギャラの支払いがうまくいかないことがあるのもその理由の一つでしょう。タレントのギャランティの相場は「時価」に近く、1年で大きく変動することも珍しくありませんので。
※ちなみに、法務省関連では、KENまもる君/サイバンインコ/らっか正義君、等、
 ダジャレを使ったキャラクターが採用されやすいようです。

 これらのキャラクター案件の多くは民間企業に発注されます。法案の成立から今回のキャンペーンの発動まで、半年近くの猶予期間がありました。成立前の審議も含めると数年にわたります。現在の社会問題とそれを解決するための法案を注視していけば、次にどのようなキャンペーンが打ち出されるのかを予測することはそれほど難しくありません。
 あなたの会社でも、国や自治体の動きを注視して「次の一手」を模索してみませんか。