「公共ビジネスの着眼点」 東京オリンピックの開催に注目

 東京オリンピックは予定通り開催されるのか。開催されるとして、どのような形態で実施されるのか。
 コロナ禍の収束状況を見据えたぎりぎりの調整が続いています。

 東京オリンピックは、IOC、東京都、JOCの3者間で締結された契約を元に行われる事業ですが、まぎれもなく国策であり、公共事業だと言えます。しかもインフラ整備などの事業とは注目度に各段の差があります。

 ちなみに政府は2015年7月に立ち上げた「東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部」において、“オリパラ基本方針”を示しています。
http://202.214.216.10/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/kaigi/dai2/siryou1-1.pdf
〇大会を契機として日本を再興し、成熟社会における先進的な取組を世界に示す。
〇パラリンピックの開催は、障害者の自立や社会参加を促す大きな力。参加国・地域数についても、オリンピックとの差が縮まるよう、過去最多を目指す。
〇国際テロ・サイバー攻撃の脅威の高まり等、セキュリティをめぐる情勢は時代とともに変化しており、安全安心対策は必須。
〇世界の注目が日本に集まる機会を活かし、「復興五輪」として、復興の後押しとなる取組を進める。
〇スポーツ、文化・クールジャパン等のイベントを通じたオールジャパンの魅力の発信、大会機運の醸成、外国人旅行者の地方への誘客拡大等を通じて、大会を国民総参加による日本全体の祭典とする。全国に大会の効果を行き渡らせ、地域活性化につなげる。
〇「強い経済」の実現、日本文化の魅力の発信、スポーツを通じた国際貢献、健康長寿・ユニバーサルデザインによる共生社会、生涯現役社会の構築に向け、大会の遺産(レガシー)を創り出す。

 政府の提言は網羅的になりがちな傾向はありますが、それにしてもいかにこの事業に多くの要素を盛り込み、期待を寄せているかが分かります。そういった事情を踏まえて現状の政府の対応を見ると、どうしても「今さら止める訳にはいかない」という意識が先行しているように見えてしまいます。

 こういう具合に過去に支出した費用を惜しみ、判断が左右されることを「サンクコスト効果」と呼ばれます。経済学的には錯覚・誤謬の一種であり、合理的な思考とはかけ離れた判断だとされています。しかし現実社会、ましてや政治の世界は合理性では動きません。多様な関係者がいる中での利害関係の調整、そしてリーダーの面子、リーダー同士の相性(有り体に言うと好き嫌い)等が複雑に絡み合ってきます。

 オリンピック開催の可否や形態は他の公共事業にも影響してきます。「オリンピックの状況待ち」というステータスの事業が多数あるのです。それはオリンピックという大型イベントが行われている最中では、進めることが困難である事業の場合もありますし、オリンピック開催を一つの基準や前例とすることで、これから実施に持ち込みたい事業の場合もあります。

 オリンピックをめぐるこの動きは、まだ二転三転しそうですが、引き続き注視していきたいところです。