「公共ビジネスの着眼点」 人事異動の季節

 官公庁の人事異動の季節を迎えています。

 報道されることが多いのは官僚のトップである事務次官人事です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA23DC60T20C21A6000000/

 この時にまず確認するべきなのは従来通りのルート(財務省であれば主計局長、経済産業省であれば経済産業政策局長、等)を経た上での就任なのか、そうではないのか、といったところです。従来ルートで無い人事が行われた場合は、どのようなバックグラウンドを持つ者が登用され、そこにどのような政治的意図やメッセージが込められているのか、といった事が読み取れます。
 そういった意味では今回の事務次官クラスの人事ではサプライズは少なかったように思えます。

 このような幹部クラスの人事は官公庁組織の中期的な方向性を読む上で重要なのはもちろん、時にゴシップ的な話題(「事務次官確定と思われていた人材が官邸の方向性と対立したために更迭された」等々)が加わることでとかく興味を引きがちです。

 しかし、公共ビジネスに携わる者として、実務的により重要になるのは担当者人事でしょう。それは課長補佐、係長といった調達実務に携わるような方々の人事です。このクラスの人事異動に対してどのような対応を取るかはビジネスに直接的な影響を与えます。

 一番、分かりやすいのは、仕掛かり中の案件があるタイミングで担当者が変わる時でしょう。
 担当者によって仕事の仕方や重視するポイントも違うので、このタイミングでの引継ぎがうまく出来ていないと、失注やトラブルを起こすことにつながってしまいます。

 また、疎かになりがちですが、過去に接点のある担当者の異動先を把握することも重要です。担当者クラスは政策分野が近い部局に移動することが多いので、事業者としてもこれまで行ってきた知見を活かせることが多いのです。
 これは決して、知り合いの担当者から仕事を流してもらうという事ではなく、正当なルートを通じて政策課題を深くヒアリングできる機会を得られるという事です。もちろん、接点の無いところから真正面にヒアリングを依頼することもできますが、門前払いになることも多く、知己のある人脈を通じて行うのとでは各段に効率に差が出ます。

 官公庁組織は2,3年での異動が基本であるため、担当者との仕事上の関係は短期間で終わってしまうことが多いです。しかし、逆に言うと接点ができた担当者との関係を維持することが出来れば、人脈は乗数的に拡大していきます。
 担当者との縁を地道に維持し続けることのできる企業こそが、より大きなビジネスチャンスをつかむことができるのです。