「公共ビジネスの着眼点」 改正銀行法は公共ビジネス市場に活況をもたらすか

 5月19日、改正銀行法が参議院本会議にて賛成多数で可決され、成立しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB18EJL0Y1A510C2000000

 これまで銀行の業務は銀行法により厳密に定められ、(1)預金、(2)貸付、(3)為替という3つの固有業務、およびその付随業務のみしか認められていませんでした。そこで多くの大手銀行は子会社を作り、フィナンシャル・グループとして証券やクレジットなど、さまざまな業務を手掛けてきました。

 今回の改正銀行法により、銀行の業務として人材派遣やシステム販売などが、新たに認められます。さらに事業会社への出資上限を原則5%(持ち株会社では15%)としてきた規制も緩め、地元産品の販売など地域経済に寄与する非上場企業には100%出資を可能とする、というものです。
 特に意味の大きな変更点は、このうちの後者の方です。これまでは債券を持つことしか出来なかった銀行が、株式を持つことができるようになる。つまり、企業の所有者になることができるのです。

 これは超低金利で事業環境が悪化した銀行が、融資などの本業とは別の分野で稼げるよう、業務範囲の拡大を認めるという方針の下に行われた改正で、主に地方銀行による活用を期待されているものです。
 たとえば、もともと地方銀行は、ビジネスマッチングに取り組んできました。顧客である地場企業と他プレーヤーとの商談の機会を設けることで、顧客企業の販路開拓や商品開発を促すものです。これはあくまで顧客サービスの一環として行っていたものですが、銀行法改正以降は収益事業として行ってもいいことになります。

 この改正により、地方銀行が公共ビジネスの地域活性化の領域にも進出してくることが予想されます。そうすると、官公庁や自治体から、案件受注を狙う機会も増えるでしょう。また、従来の公共ビジネスのプレーヤーも、地場産業のハブである地銀と組むことが有力な選択肢になってくるわけです。

 今回の改正が、銀行にとって真のチャンスとなるのか、それとも不慣れな事業拡大により「武家の商法」と揶揄されるような状況となり、本業にまで悪影響を与えてしまうのか。この点は専門家の間でも意見が分かれるところで、正確には予測がつきません。しかし、公共ビジネス市場にとっては、活性化の大きなチャンスと捉えることができると思います。
 この新たな制度改正が地域活性化につながり、その結果として公共ビジネス市場が活発になることを期待します。