「公共ビジネスの着眼点」 補助金・給付金の不正受給と「性善説的運用」の功罪

 国税局の職員を含む10人が持続化給付金を不正に受給していたことが分かりました。。

東京国税局職員ら7人逮捕=給付金詐取容疑、被害2億円か(時事通信6月2日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/0eb2a2c59ecd4c1850959d1ec8eb767645babe4b

 コロナ禍によって売り上げが大きく落ち込んだ中小企業や個人事業主への給付金は、2020年5月に始まった「持続化給付金」と7月開始の「家賃支援給付金」などがあります。
 類似の案件として経産省キャリア官僚2人が「家賃支援給付金」に対して不正な申請を行ったのは、2020年12月下旬から2021年1月にかけてでした。
 また、2020年の12月初めには、顧問先の従業員ら約100人に持続化給付金の不正受給を持ちかけていた疑いで、国税庁OBの元税理士が大阪府警に逮捕されています。こちらも被害額が1億円以上に上ることもあり、大きく報じられました。
 さらに警視庁は同時期、国立印刷局の20代の男性職員2人を持続化給付金の不正受給の容疑で逮捕。別の20代の男性職員二人を書類送検しています。4人はそれぞれ100万円の給付金をだまし取ったとして起訴され、懲戒免職となりました。これらの報道を耳にしながらも、公務員がこのような事件を引き起こしてしまったことは非常に残念に思います。

 当然、行政職員によるシステムの悪用、給付金の不正受給は、許されることではありません。しかし、公共ビジネスに携わっているものとして、それ以上に懸念していることがあります。それは、こういった事案を機に給付金や補助金等の審査工程が極端に厳格化されることです。

 別記事の中で担当者は「審査が甘いといわれるが、性善説に基づき速やかに支払っている。そこに付け込む不正は残念で遺憾だ」「不正に対しては捜査当局と連携し、厳正に対処していく」とコメントを残しています。
 この類の給付金や補助金の審査はこのコメントの通り、基本的に性善説を前提に運用されています。なぜなら、申請内容を一つ一つ疑ってかかるとその裏取りに工数がかかり、事務処理が遅れてしまうからです。そうすると、コロナ禍において一日も早い収入確保が求められる市民や事業者への給付が遅れてしまうのです。

 このように、本来は法律を遵守し、法に乗っ取ったシステムの運用を義務付けられている側が、その裏を取るような形で不正に手を染めてしまうことには、その被害金額以上に大きな社会的影響があると言えるでしょう。
 いずれにしても、不正受給は許されることではありません。まずは一早く本事件の全貌を明らかにして、適切な措置を取って頂きたいと思います。そのうえで給付金や補助金の審査工程に関しては、迅速な事務処理、すなわち性善説に則った運用を維持しながら、不正受給に関しては「追って厳罰に処す」というスタンスで臨まれることを期待します。