「公共ビジネスの着眼点」 米国の自動車関税が発効。国の「ミカタプロジェクト」は自動車産業への有効な支援策となり得るか
米国による自動車輸入への25%の追加関税措置が2025年4月3日に発動されました。米国市場は日本の自動車業界にとって最大級の輸出先であり、中小部品メーカーにとっては、自動車メーカーや一次サプライヤーの生産調整が即座に業績へ跳ね返ることから、今回の関税措置は日本の自動車関連の中小企業に大きな衝撃を与えました。
今回の関税措置に対する行政の動きとしては、政府が各都道府県の商工会・商工会議所やよろず支援拠点、政府系金融機関などに「特別相談窓口」を設置し、セーフティネット貸付の要件緩和や資金繰り支援といった緊急対応に乗り出しました。
こうした迅速な対応は一定の安心材料であり、関税措置の影響を受ける中小企業の資金繰りを下支えする短期的効果としては期待できそうです。一方で、事業構造の変化や新たな市場への転換といった「中長期的な経営課題」に対応するには、こうした緊急支援だけでは限界があると言えます。
ここで改めて注目したいのが、経済産業省が2022年にスタートさせた「ミカタプロジェクト」です。
○ミカタプロジェクトとは
#経済産業省:「ミカタプロジェクト」ウェブサイト
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/mikata_project.html
このプロジェクトは、自動車のEVシフトが進む中、自動車部品サプライヤーが電動化対応部品への転換を迫られる状況に対して、経営支援や専門家派遣、支援制度の案内などを通じて伴走型の支援を行うことを目的に設置されました。全国各地に支援拠点を設けており、中堅・中小サプライヤーの事業転換等を支援してきた実績と支援ノウハウの蓄積があることから、経済産業省では今回の関税措置に対しても、ミカタプロジェクトの活用を促しています。
経済産業省:ミカタプロジェクト支援事例集
https://auto-supplier-mikata.go.jp/result/
今回の関税発動という「外圧」は、中小部品メーカーにとって、まさに事業構造の転換や再構築を迫る契機となり得るでしょう。
これまで自動車メーカーで内製化されていた部品や製造工程が国内回帰される可能性もあれば、欧中のEV向けや新興国市場への進出といった「脱・米国依存」の動きが加速するかもしれません。
一方で、国内自動車メーカーが米国向け生産の一部を日本からアメリカへ移管するという報道も出ており、これに伴って部品調達先までも現地企業に切り替えられる場合、中小部品メーカーは既存のサプライチェーンから外されてしまうリスクもあります。
#NHKニュース 「ホンダと日産 現地向け生産の一部 日本からアメリカへ移管」2025.4.16付
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250416/k10014780781000.html
こうした先の見通しが立たない状況に置かれた中小部品メーカーの経営者にとっては、短期的な支援に加えて、中長期的な事業戦略の見直しが求められていると言えるでしょう。
「ミカタプロジェクト」は、こうした中長期的な課題に対して有効なアプローチを提供する数少ない公的支援であり、業界特化型である点に大きな強みがあります。
商工会・商工会議所やよろず支援拠点は、対象業種が多岐にわたるため、今回のような有事に、自動車産業特有の技術・商流・規制に即した支援を急ごしらえで実施することは難しいです。
これに対して、ミカタプロジェクトでは自動車業界に精通した専門家とのネットワークが形成されており、現場の実情に即した支援が期待できそうです。
今回の関税措置が一過性のものに終わるか長期化するかは予測がつけ難いですが、この有事を“変革の起点”と捉え、中長期的な経営力強化に資する公的支援策をいかに活用できるかが、中小企業にとって重要になりそうです。
中小企業診断士としては、こうした支援施策を適切に紹介することが重要な役割となりそうです。特に業界動向に明るくない経営者に対して「どこに相談すればよいか」「どのような方向転換が可能か」といった道筋を示すうえで、ミカタプロジェクトをはじめとする産業特化型支援の存在を再確認し、こうした有事の際に中小企業に対し活用の提案をしていくことが公共ビジネスの観点からも重要となってくるでしょう。
当社は、官公庁への効果的なアプローチ方法について、伴走型の専門的なアドバイスを行っています。
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