「公共ビジネスの着眼点」 国がM&A仲介業の資格制度創設に向けて動いています

中小企業のM&Aの質と透明性を高めるための新たな取り組みとして、国が新たな資格制度を創設するようです。

#中小M&A市場改革プラン(令和7年8月 中小企業庁発表)p43、44
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250805002/20250805002-2r3.pdf#page=44

〇中小企業M&Aを巡る現状

近年、企業の休廃業・解散件数が増加傾向にあり、昨年2024年では約6.3万件と、前年の約5万件から約26%もの増加となっています。企業支援に携わる支援者に限らず、企業の倒産に関するニュースを目にすることが増えていると感じている方も多いのではないでしょうか。

休廃業・解散件数は増加の背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大にともなって措置されたゼロゼロ融資の返済開始などが存在すると考えられています。また、休廃業・解散を実施した事業者の半数以上が黒字経営だったというデータもあり、承継の機会に恵まれず望まない廃業を選択せざるを得なかった事業者も多かったのではないかと窺い知れますね。

こうした状況から、近年、国や自治体が後継者不在による廃業を減らしていくための事業承継やM&A(Mergers and Acquisitions:企業合併・買収)への支援制度を拡充してきたことで、中小・小規模事業者のM&Aの実施件数が急増しています。その一方で、一部ではM&A支援を巡るトラブルが問題視されています。

〇M&A仲介市場の現状と問題点

M&Aの支援は、国が全国に設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」と、民間のM&A支援機関のいずれかが仲介に入って実施されるケースが主流となってますが、年間では民間支援機関による支援実施件数が事業承継・引継ぎ支援センターの2倍以上となっています。M&A支援による地域経済の発展に民間事業者の力は今や不可欠と言っていいでしょう。

#中小M&A市場改革プラン(令和7年8月 中小企業庁発表)p31 図表44 「中小M&Aの実施件数の推移」
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250805002/20250805002-2r3.pdf#page=32

一方で、一部の仲介事業者による悪質な買い手の紹介などによるトラブルが起こっており、M&Aに対する信頼そのものを失わせかねない事態に国は危機感を感じているようです。

#Yahooニュース 2025.9.16付 「平均年収2000万円超えの会社も」 美談の裏で“金銭トラブル”横行「M&A仲介会社」の驚くべき「光と影」
https://news.yahoo.co.jp/articles/e007cbb1e2661ce693182a41fde116fb643b0070

○2026年度に創設「中小M&Aアドバイザー試験」とは

こうしたなか、中小企業庁は中小M&A支援のための新たな資格制度創設に関する議論を進めており、8月に中小企業庁が発表した「中小M&A市場改革プラン」などを通して、大まかな具体像が明らかになっています。

#中小M&A市場改革プラン(令和7年8月 中小企業庁発表)p43、44
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250805002/20250805002-2r3.pdf#page=43

 現在公開されている情報によれば、新たな資格は2026年度をめどに創設され、資格を取得するには、

・M&A実務(M&Aスキーム、進め方・留意事項、リスクへの対応等)
・財務・税務
・バリュエーション・DD(ビジネスDD、財務DD、法務DD、PMIを見据えた取組等)
・法務(民法、会社法、労働法、株式譲渡契約等)
・行動規範・倫理(中小M&Aガイドライン、倫理等)

を問う「中小M&Aアドバイザー試験」に合格する必要があるようです。具体的な試験科目は今後検討が進められるようですが、行動規範や倫理について問う資格試験は珍しく、合格した後にも規律を維持するための更新研修などが設けられることになりそうですね。

試験方法は選択式・短答式のCBT試験(コンピュータを使用したオンライン試験)で実施することが想定されており、中小企業診断士試験のように受験のために地方から都市部に移動する必要はなさそうです。

現段階では「民間ベースでの取組として創設する方向で」検討が進められているようなので、国家資格ではなく、販売士(リテールマーケティング)検定や簿記検定のような公的な検定資格としてまずは位置づけられることになるのではないでしょうか。

○中小企業診断士は新資格を取得するべきか

独立診断士にとっては、新資格は新たなビジネス領域へと進出するチャンスとなりそうです。右肩上がりに企業倒産が続く市場環境を踏まえると、地方を中心に支援が行き届いていない小規模M&Aの案件は数多くあると言えるでしょう。資格を取得して「公的なお墨付き」を得られれば、M&Aの案件に近しい地銀や信用金庫の外注パートナーとして仕事を請け負う可能性が高まるでしょう。

また金融機関などM&A市場に近いフィールドで活躍する企業内診断士にとっても、新資格は魅力的な制度になるでしょう。

金融機関にとって M&A支援は「融資需要を生み出す営業機会」です。資格取得によって「融資審査+M&Aスキーム理解」の両方を担える人材は組織にとって価値が高く、単なる融資担当を超えて「M&A助言ができる行員」として差別化でき、キャリアアップに直結する可能性が高いと言えるでしょう。

資格保持者であれば、「公式に認められたM&A支援人材」として顧客に安心感を与えることができ、成約率の向上にもつながるかもしれませんね。

診断士資格と新資格とのダブルライセンスで将来的な独立や転職を目指す場合の差別化ポイントにもなりそうです。

新資格については、実務要件のような受験資格があるのかなど、まだ明らかになっていない情報もありますが、今後随時公表されるであろう制度設計の動向にアンテナを張り、取得に向けた準備を進めてみてはいかがでしょうか。

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