「公共ビジネスの着眼点」 地方金融機関が事業承継支援に本腰を入れています
地方銀行や信用金庫といった地方金融機関が、これまで以上に事業承継支援に力を入れ始めています。
#Yahooニュース 2025.7.1付
後継者不足に挑む 沖縄銀行が新会社を設立
https://news.yahoo.co.jp/articles/8f9b38aa3607a49018bb70e8b720c5bc35569da3
#NHK 2025.5.28付
北日本銀行 事業承継支援のための子会社 7月に設立へ
https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20250508/6040025532.html
この背景には、日本が17年ぶりに「金利のある時代」へと突入したことがありそうです。2024年、日銀がマイナス金利を解除し、追加利上げを決定したことにより、金融機関にとっては預金利息負担が増える一方、貸付利息収入も回復基調に入りました。
しかし今後の地方金融機関経営を考えると、利息収入だけでは安定した収益基盤を築けないという現実があります。
〇これまでの金融機関の経営支援の実態
各金融機関では、かねてよりコンサルティング事業部を立ち上げる動きが活発化しており、貸付け業務だけでなく、地域の中小企業の経営支援を強化することで新しい付加価値の提供と収益の確保に乗り出してきました。
これまでその支援の中心にあったのが補助金申請支援だったように思われます。コロナ禍以降の国や地方自治体による手厚い補助金交付が続く中で、補助金申請支援は、申請支援そのものによる報酬に加え、採択後の設備投資資金の新規貸し付けという二重のキャッシュポイントが見込めることから、金融機関にとって大きなメリットがありました。
しかし、ここ最近、その流れに変化が起きているようです。補助金支援から、より長期的な顧客維持・関係深化につながる「事業承継支援」へと、各行が力点を移し始めているのです。
〇事業承継支援に力を入れる理由と政策的背景
金融機関が事業承継支援に力を入れる理由として、事業承継にはさまざまな収益機会があることが挙げられるでしょう。単なるM&A仲介報酬に留まらず、売り手経営者への信託や遺言・相続設計、承継時の保険商品販売など、複合的にサービス提供できることが見込めます。
そして何よりも、廃業によって消滅してしまう顧客を救い、顧客の減少を防ぐことができるという、金融機関にとっては最大級のメリットもあります。
6月に閣議決定された骨太の方針2025でも、事業承継支援の強化が打ち出されています。また、2027年末には事業承継税制の特例措置が終了予定であり、今後1年半程度で承継を完了させたい企業オーナーが一気に増えることも予想されます。こうした外部環境の後押しもあり、事業承継支援への注目は一層高まると考えられます。
地方金融機関に所属する企業内中小企業診断士にとっても、事業承継支援は腕の見せ所となりそうです。(一社)中小企業診断協会が行ったアンケート調査では、企業内診断士の2割以上が金融機関に所属しているというデータもあります。
診断士がもつ戦略立案・財務分析・対人支援といったスキルは、承継計画策定支援や第三者承継(M&A)における事業価値算定など、多方面で活用が期待されています。
〇地域金融機関が果たす本質的役割とは
事業承継問題は金融機関にとって単なる一事業分野ではありません。廃業が進めば、地域から雇用が失われ、取引先ネットワークも分断され、最終的には金融機関自身の経営基盤を揺るがしかねません。廃業は単なる融資回収リスクではなく、地域全体の経済循環を止めてしまう重大課題です。
一方で、事業承継支援を通じて廃業を回避できれば、既存顧客の維持だけでなく、後継者による新たな投資や事業拡大につながる可能性も高まります。近年は地方金融機関自身がM&A専門子会社を立ち上げ、行内で承継専門チームを編成する動きも相次いでいます。
これは、事業承継支援が融資や運用商品といった伝統的な金融サービスと異なり、地域企業の成長戦略に深く入り込むことで、自行の存在価値を再定義することにもつながる取組みだからでしょう。
金利上昇局面においても、預貸金ビジネスだけに依存するモデルは限界が見えています。経営コンサルティング、補助金支援、そして事業承継支援を通じ、地域の企業と課題を共有し、解決に向けた総合的な提案ができる存在になることが、これからの地方金融機関に求められる真の姿であり、そこに診断士のスキルを活かすことができる可能性が大いにあると言えそうです。
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