「公共ビジネスの着眼点」 官公庁の発注契約の価格転嫁について国が議論。その内容とは?
官公庁の発注契約における価格転嫁について、政府が副大臣会合を開催し、価格転嫁や取引適正化の促進について議論しました。
#産経新聞 2024.8/5付
https://www.sankei.com/article/20240805-YTCEXSO7UROMJHVDIQJQ5BFS3Y/
会合では、国や自治体が発注する事業に関して、中小企業側から労務費や原材料費などの高騰について容易に価格転嫁できない現状を踏まえ、国や自治体が主体的に適正な価格転嫁を徹底するよう改めて周知を呼びかけることが確認されたようです。
○今回の副大臣会合の背景
国はこれまで大企業・中堅企業と、その下請けとなる中小企業・小規模事業者との間での適切な価格転嫁や取引適正化に向けた施策を講じてきました。
具体的には、経済産業省では取引調査員(下請Gメン)による訪問調査や、価格転嫁に後ろ向きな企業の実名公表など、各業界に適度なプレッシャーをかけながら大企業・中堅企業に価格転嫁の受け入れを呼び掛けています。
他方で、2023年7月からは全国よろず支援拠点に価格転嫁サポート窓口を設置し、中小企業・小規模事業者に対して価格交渉や原価計算手法の習得支援を実施するなど、川上・川下の両面から環境整備を推し進めている格好です。
こうした状況の中で、今回の副大臣会合は中小企業の受注が約5割を占める政府調達や、国以上に地域の事業者との取引が多い自治体の発注などの、いわゆる「官公需」において価格転嫁や取引適正化に国や自治体が自ら取り組んでいく姿勢を見せる狙いがあり、官民挙げて中小企業の賃上げの原資の確保を後押ししていくようです。
○官公需と中小企業と賃上げ
ご存知のとおり、国や独立行政法人、県・市区町村等が、物品を購入したり、サービスの提供を受けたり、工事を発注したりすることを「官公需」と呼びます。
国は、中小企業者向けの官公需契約目標や目標達成のための措置をまとめた「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」を毎年度公表しており、地方公共団体と連携して、中小企業・小規模事業者の官公需の受注機会を増大に努めているところです。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/kankoju.html#K01
令和6年4月に閣議決定された最新の基本方針では、中小企業・小規模事業者向け契約目標比率を61%と定め、「『物価高に負けない賃上げ』の実現に向け、官公需においても価格転嫁を進めること」を新たに講ずる主な措置として挙げており、岸田政権が重視する「分配政策」が色濃く反映された方針となっています。
なかでも注目すべきは、物件や役務の契約の途中で契約金額を変更する必要があるか否かを国等が検討するケースとして、それまで記載のなかった「労務費」の上昇が明記されたことです。
一般的に民間企業間の取引では、労務費を価格転嫁することは原材料やエネルギーコストの転嫁以上に難しいとされています。というのも、外部要因で変動する原材料費などと異なり、労務費は企業内部のコストとみなされることから発注者にとって価格転嫁が合理的と理解されづらいからです。
一方で、官公需の場合は少し事情が異なります。行政は、賃上げの促進による経済の好循環の実現に向けて価格転嫁を主体的に推し進めていかなければならない立場にもあります。そのため、民間ではなかなか進まない労務費についても官公需が先頭に立って価格転嫁を推進していく、そういう意向が見えてきます。
もともと官公需において公共工事を除き契約変更はめったに起こらないとされるなか、今後は、役務の提供や、委託・調査事業などの労働集約的な事業においても、労務費の転嫁に基づく契約変更の事例が増えていくことが期待されます。
※なお、9月の自民党総裁選に岸田首相は続投しない意向を示しており、次の自民党総裁がどのような考え方を持っているのか、それが価格転嫁の推進にどう影響していくのか注視していきたいところです。
また、政策面での価格転嫁に向けた後押しが強まっているとは言え、個々の契約の価格転嫁においては発注者である行政とのコミュニケーションが極めて重要です。
行政には行政の論理や予算上の制約があり、それを踏まえた交渉でないと民間同士の交渉と同様に、なかなかうまくはいかないはずです。
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