「公共ビジネスの着眼点」 公共ビジネスの年度末が慌ただしい理由。行政の「会計年度独立の原則」を知っておこう
令和7年度も残すところ2ヶ月ほどになりました。行政や公的機関からの仕事を請け負う診断士の皆さまの中には、年末や年明けに急に案件が舞い込むことや、急な案件にもかかわらず「この案件、2月中に完了できますか?」「必ず年度内に報告書をまとめてほしいのですが」といったオーダーを受けたという経験をされた方も多いのではないでしょうか。
こうしたことが起こる背景には、行政特有のルールである「会計年度独立の原則」が存在します。
○会計年度独立の原則とは何か
「会計年度独立の原則」とは、行政の予算は原則としてその年度、すなわち4月1日から3月31日までの間に使い切らなければならないという考え方です。
行政の予算は、議会で承認された「年度ごとの枠」として厳密に管理されており、年度をまたいで自由に使うことはできません。また、使われなかった予算は、原則として国庫や自治体に返納されます。
そのため行政側から見ると、年度内に予算を使わなければ、「事業を実施しなかった」「計画倒れだ」と評価されることになり、翌年度以降の予算要求にも影響する可能性があります。
こうした事情から、年度の後半に「まだ執行できていない予算」がある場合は、それを使い切るために、案件の依頼が動き出すのです。診断士の業務を例にすると、公的機関の専門家派遣制度の派遣要請や経営改善計画の策定支援の案件が年末ごろに急に増えたり、公的支援機関の相談員が出勤日数を増やすよう要請を受けるケースが見られます。
○なぜ「2月までに完了」が求められるのか
公共ビジネスでは、発注者である行政や公的機関から、3月末ではなく2月末や2月中頃まで事業を完了してほしいと言われることがあります。これも「会計年度独立の原則」と深く関係しています。
行政にとって3月は、実績報告書の作成や支払い処理、それらに向けた内部決裁の準備など、年度の切り替わりに伴う事務作業が極端に集中する時期です。
行政職員によっては、4月の部署異動が見込まれる場合、3月末までにしっかりと仕事を整理したうえで後任に引継ぎをしたいという考えもあります。こうした場合は、事務作業に係る時間を見越して、2月末までには事業を完了できるようスケジュールを管理されることになります。
さらに、公的機関の職員の立場に立ってみましょう。公的機関の事業は、行政から委託を受けている事業がほとんどなので、公的機関の担当者は、行政の担当者が3月末までに余裕をもって仕事を片付けられるよう、さらに遡って2月の中頃までには事業を完了し、行政担当者に必要な報告を行うことができるようするようスケジュールを組んでいる場合が多いです。
そのため、実務の現場では、形式上の事業完了の期限は3月末であっても、実質的な締め切りは2月中という扱いになるケースが少なくありません。これが、公共ビジネスにおいて年度末が極端に慌ただしくなる理由です。
○診断士が意識すべき実務上の視点
この仕組みを知らずに公共案件を受けていると、突然の短納期案件に振り回されてしまったり、民間案件とスケジュールが重なって業務が破綻したりすることがあります。結果として、品質の低下や体調管理への影響、さらには収支計画の乱れにつながることもあります。
一方で、「会計年度独立の原則」を前提に仕事を組み立てれば、年度後半が繁忙期になることをあらかじめ織り込んだスケジュール設計が可能になります。公共案件の増える時期を見越して民間案件の受注量を調整したり、協力者や外注体制を事前に整えたりすることもできるでしょう。
また、行政の案件は支払いが年度末から翌年度初めになることが多いため、入金時期を見据えた資金繰りの計画も重要になります。制度を理解していれば、想定外の資金不足に陥るリスクも下げることができます。
さらに、行政側の事情を理解している診断士は、無理な条件交渉を避け、現実的な工程を提示することができます。こうした姿勢は、行政職員との信頼関係構築にもつながり、「事情を分かってくれる専門家」として重宝される存在になるでしょう。
○公共ビジネスは制度理解が最大の武器になる
公共ビジネスは、民間ビジネスとは異なり、予算制度や会計ルール、事務手続、そして「年度」という時間軸に強く支配されています。その根幹にあるのが今回ご紹介した「会計年度独立の原則」です。
この原則を知ることは、行政がなぜその時期に、なぜその動きをするのかを理解する入口でもあります。
公共ビジネスに関わる診断士にとって、「会計年度」という時間感覚を理解することは、専門知識と同じくらい重要な基礎スキルです。ぜひこの原則を意識しながら、年度末の繁忙期を戦略的に乗り切っていただければと思います。
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